獣耳彼氏
第六章
正直な想いを伝えられる人とそうでない人
その日は急にやってきた。
秋の空から冬へと移り変わる季節。
そんな日の夕方。
私はある人に呼び出されていた。
「急に呼び出して悪いな、水嶋」
そう私に言うのは、最近めっきり大人しくなっていた部長で。
この日、部活終わりに部長に話しがあると呼ばれたのだった。
実を言うと、秋月くんに協力してもらうようになってからは、ほぼほぼ話しかけてくることはなくなっていて、安心していた。
ようやく、落ち着いたんだと。
だけど、実際に呼び出され目の前にすると身構えてしまうのも事実。
部長から少し距離を置いて立つ。
「…あの、それで何ですか…?」
部活が終わった後の道場には私にと部長の二人のみ。
他の部員たちはさっさと帰って。
京子は今日用事があると言っていたから、もうすでに帰ったのだろう。
つまり、助けを求めることのできる相手も居ない状況。
その状況下での二人っきりに不安がないと言ったら嘘になる。
だけど、いつまでも避けていられる訳でもない。
しかし、目の前に立つ部長の様子が違う。