獣耳彼氏
たくさんの人が生活しているだろう生活音と自分の足音。
それらが聞こえる中、あることに気付いた。
私の足音とは別にもう一つ。
後ろから聞こえてくる足音。
それも、私の歩調とほぼ同一の音。
同じスピード、同じ間隔で。
そのことに気付いた途端、背中に悪寒がはしった。
悪い考えがふと頭の片隅を過る。
変質者…その考えが浮上してきた。
中々、日本は平和だと言われることもあるけど、物騒な世の中だ。
自分には関係ないと思っていても、ふとした瞬間に自分の身に降りかかってくることもある。
それが今だとしたら。
撃退できないこともないけど、できれば勘違いであって欲しい。
本当にたまたま同じ方向なのかも知れないし。
そう思って足を進めても足音はずっと後ろから聞こえてくる。
しかもかれこれ10分、20分は軽く。
これは本当に危ない人かも知れない。
正体の分からない足音に、私は真っ直ぐ家に帰ることは止め、比較的人通りの多い道へと足を向けた。
その間にもやはりと言ってか、ずっと足音は付かず離れずの距離でついてくる。
嫌な考えが頭の中を巡り出す。