獣耳彼氏
秋月くんに連れられて初めて行った場所。
そして、離れると決めたその場所。
まさか、こうして再び行くことになるとは思っていなかったけど。
緊急事態だ。行くしかない。
何度も往復していた道を逸れ、真っ直ぐ丘を目指した。
恐怖からか緊張からかその足の運びは段々と速くなる。
それに合わせて、後ろからついてくる足音、気配も速くなる。
やっぱり、私を追っているのだと再認識した時には公園に着いていて。
迷いなく雑木林へと足を踏み入れた。
塗装されていないあぜ道をなるべく急いだ。
「…はぁ、はぁ」
急ぎ足で公園へ行き、休む間もなく雑木林へ入ったものだから息が上がる。
それでも足を止めることはしない。
司さんのすぐに来るという言葉を信じて。
本当は。自分で解決しないといけないことだと思う。
秋月くんに離れると告げたあの日。
強くなると決めた私。
こんな変質者も自分で退治できなければ強くなれたとは到底言えなくなる。
やっぱり助けを求めてしまう自分はやはり弱いのだろうか。
秋月くんに言った言葉。
守ってくれなくていい。と。その言葉に嘘はない。
本当なのだと教えたかった。
秋月くんには守られなくていい。
ただ、ただ。一緒に居たかっただけなんだ。