獣耳彼氏
彼らが対峙している。
交わる拳がその力からか微かに震えている。
どちらとも動かない膠着状態。
それを壊したのは秋月くんだった。
椎名先輩の拳を振り払うと後ろへ一気に跳躍する。
再び青色の炎の壁が出来る。高く分厚い炎の壁。
遠くに居る私の所までジリジリと肌を焼くような熱さが届く。
炎から巻き上がる熱風が秋月くんの金髪を揺らす。
散る火の粉が秋月くんの周りを舞い、それはそれは幻想的な姿を魅せる。
赤と青。そして、秋月くんの金色が闇夜に輝く。
まるで、一枚の絵画を見ているように思えてくる。
しかし、その光景がどのようにして出来たものか考えるとジッと見ていられないのは確かだ。
風が吹く。強い風が突風となって体を打ち付ける。
強い風に目を開けてられなくて瞑った。
突然のことに足が微かに浮くが、すんでで踏ん張ることでそこに留まる。
「な、に…?」
何が起きたのかと、薄く目を開ける。
いまだに風が吹き荒れていて、その風に乗って鮮やかな赤が飛び散っている。
火の粉が混じる風を受けてじんわりと汗が滲み出す。