獣耳彼氏



「くっ…うわぁー!」


叫ぶ椎名先輩の周りに風が集まっている。


それは段々と大きくなり渦を巻きだすと、大きな大きな竜巻がそこに現れたのだ。


砂と火を取り込んだそれはさながら炎の竜巻。


秋月くんが壁として出した炎が仇となった瞬間。



「秋月くん…っ!」



私よりも椎名先輩の近くに居る彼。


竜巻は秋月くんを飲み込むつもりなのだろう。


ゆっくりと中心が動き始める。


狙われている彼、秋月くんはその場に立ち避けようとしない。



このままだと…目を背けたくなる光景がまざまざと脳裏に浮かぶ。


炎に巻かれる秋月くんの姿。


そんなの見たくない。


彼を守ろうと一歩踏み出そうとした。その時だった。



秋月くんが居なくなった。


私の目の前に居たはずの秋月くんが一瞬で。


椎名先輩からもそう見えたようで、慌てた様子で辺りを見回す。


その間にも竜巻は歩みを進める。


狙っていた秋月くんが居なくなったことで秋月くんと同じ直線上に居た私に向かってそれはやってくる。


進みは遅くともその範囲の広さだ。


直ぐに私の元へと届くことだろう。



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