獣耳彼氏
映るのは背中ばかり
「遅くなったわ」
リョクさんの背中から飛び降り、私の前に立った司さん。
続いてお兄ちゃんも彼女の横へと飛び降りた。
二人して10メートルは超すだろうリョクさんの背中から降りてきたことに少し驚く。
だけど、後々考えて自分も札を使った時は高く飛べることに気づき、何も不思議なことではないと一人納得した。
「秋月!最後まで気を抜くなよ!」
お兄ちゃんが叫ぶ。
離れた所に立つ秋月くんはあからさまに舌を打った。
「それはお前のことだろう」
「凌。来るわよ」
「…え?うわっ!」
ドンっと突き飛ばされたと思ったら、周囲をリョクさんの大きな肢体が包み込む。
数秒後、突風と共に炎が辺りを囲んだ。
目に痛いほどの赤が闇夜を照らす。
「秋月くん!」
思わず叫んでいた。
リョクさんの体が微かに覗く向こう側。
お兄ちゃんと司さんはすぐそこに立っていた。
札が浮かび上がりそれが二人を炎から守ったのだと分かる。
秋月くんは?秋月くんは大丈夫なの?