獣耳彼氏
彼の姿を探せば怪我もなく雑木林の方角を睨みつけていた。
黒い影が現れる。それは次第に人の形を成していく。
風が収まり、地面に燃え移った炎が影を照らし出す。
どこかで見たことのある顔。
整った顔立ち、金色の瞳、極めつけは頭上に生える獣耳。
そうだ。秋月くんにそっくりなんだ。
獣耳の生えた秋月くんに。
唯一違うのは、秋月くんのような満月を連想させるような金髪ではなく、深い闇のような濃紺だということ。
闇夜に溶け込んでしまいそうな夜色をしている。
「やはり、お前だったか…秋夜(シュウヤ)…」
「やっぱり、気づかれてたよね。久しぶりだね。秋月。いつぶりかな。分かんないや」
秋夜と呼ばれたその人はニコリと笑顔を浮かべ言った。
この場には到底ふさわしくない満面の笑み。
私たちの周りの地面に炎が燃え盛る中、彼の周囲には何の変化はなく芝が生い茂っていた。
「誰だよ、あんた」
お兄ちゃんが札を構え問いかける。
「秋の双子の兄よね」
「正解!よく知ってたね。感心するよ」
司さんが言うと、パチパチと手を叩いたその人。