獣耳彼氏
次々と矢を見切り避けている秋夜さん。
しかし、一部の避けきれなかった矢が秋夜さんの腕や足をかすめていく。
「はっ!」
間髪入れず、司さんが苦無(クナイ)を飛ばす。
矢に紛れて飛ぶ苦無が秋夜さんの肩に突き刺さった。
グサリと深く突き刺さる苦無。
「あはっ。中々、やるじゃん」
痛みを感じてないのか、秋夜さんは嬉々として笑う。
刺さった苦無を躊躇なく抜くと血の付いたそれを投げ放った。
「司!」
「…甘かったか」
司さんの方へと投げられた苦無をお兄ちゃんが札で防ぐ。
「司こそ無茶するなよ!」
「余計な心配、余計なお世話よ」
司さんに背を向け言うお兄ちゃん。
余計なお世話と言った司さんだが、お兄ちゃんを信頼しているのが読み取れる。
それぞれがお互いを心配し守り合う関係。
私だって。司さんがお兄ちゃんを心配するように私だって。
私だって秋月くんのこと心配するし、守りたい。
だけど、周囲を見ればリョクさんが私のことを守っていて。
修行してきたことが無意味に感じ始める。
この場から動かしてくれないことに、苛立ちを覚え始める。
私だって戦えるのに。