獣耳彼氏
戦うために修行してたのに。
秋月くんの肩からは止め処なく血が流れている。
一方、苦無を抜いた秋夜さんの傷からはもう血が止まっていて。
このまま、長いこと戦っていたら結末がどうなるかなんて…ううん。
そんなこと考えちゃダメだ。
だけど。秋月くんが狐火を放ち、それと共に秋夜さんを襲う。
人知を超えた速さで何度も繰り出される拳。
それらをいなしながら逆に拳を加えていく秋夜さん。
鈍い音だけが耳に届く。
「秋月!」
「秋!」
二人が秋月くんへと加勢する。
三方向からそれぞれが攻撃を繰り出す。
何事もないようにそれらを全てかわし続ける秋夜さん。笑顔で楽しそうに。
ふと、彼の言った言葉を思い出した。
『秋月のことが好きで嫌いだから』
矛盾しているその言葉の意味は何?真相は?
その言葉に秘められた秋夜さんの思いは何。
「ぐっ…」
「うわっ!」
「秋月くん!お兄ちゃん!司さん!」
秋夜さんの発した恐らく衝撃波だろう。
それが三人を吹き飛ばす。
思わず駆け出そうとしたが、リョクさんがそれを許さなかった。