獣耳彼氏
彼の表情、立ち姿から、余りしゃべることをしないような、無口なイメージを勝手に持っていた。
その彼から話しかけられた。
必要最低限、話すことをしないようなイメージの彼から。
あ、でも。思い返せば。
駅で会ったときも、結構しゃべっていたかもしれない。
凄く人をというか、私を馬鹿にした感じにだけど。
イメージと実際はやはり違うものなんだと、この時分かった。
彼に対して分析していると、ふと顔に影がかかった。
考えごとをしているにつれて、下を向いていた視線を上げると、何故かさっきよりも近い距離に彼が居た。
「…っ!?う、え、えっと…な、なんですか…?」
「何に怯えていた?」
もう一度、さっきと同じことを問いかけてくる彼。
目が合う。抗うことが出来なくなるその瞳と。
茶色い瞳の中に私の顔が写っているのが見えるくらい近い距離。
自ずと、顔に熱が伝わっていくのがヒシヒシと感じる。
奇しくも、イケメンと言われる人に対して免疫のない私。
上のお兄ちゃんはかっこよくて、イケメンとか言われるけど、もう何年も会っていないし。
一つ上のお兄ちゃんは情けない顔。
イケメンには属さない。
嫌でも、動悸は激しくなっていく。