獣耳彼氏
100年くらい生きた頃かな。
少しずつ妖術が使えるようになったのは。
だけど、やはり変化することは出来ないんだ。
せいぜい火を作ることと風を起こすことだけ。
この頃、秋月がどこで何をしていたのかなんて分からない。
里を追い出されてから一度も会ったことはなかったからね。会おうとも思わなかった。
ボクは使えるようになった術をひたすら磨いた。
何も出来なかった頃の自分とは違うから。
一人で生きていく術も身についた。
ずっとずっと、一人で術だけを磨いていた。
いつか秋月を見返すために。
里でのうのうと生きていることを考えればボクは必死に頑張れた。
そんな時だ。偶然、秋月を見つけた。この丘で。
運命かと思ったよ。
力も強くなったボクに天は味方したのだと。
これはチャンスだ。秋月を見返すチャンスだ。
だけど、さっきも言ったけど、普通に秋月を襲っても面白くない。
そんな時見つけたのが君。秋月が気にかけている人間。
直接秋月を狙うより面白くなる。
ボクが君を襲ってもよかったけどさ、あの椎名とかいう人間を見つけたからには利用するしかないよね。
君のことが好きだという彼を利用するのは簡単だ。
秋月を負かすための力が手に入る。
君の心が手に入るとそそのかせば一瞬だったよ。