獣耳彼氏
秋月くんが秋夜さんを睨みつける。
今にも再び殴り合いが始まってしまいそうな雰囲気。
また、兄弟で争い合うのか。
そんなの寂しいじゃない。
秋夜さんが唯一無二の兄弟だと秋月くんのことを言うのなら。
その兄弟の絆を大切にしてよ。
そう思うのは私のエゴなのかもしれない。
だけど、ちょっとした綻びなら簡単に繕うことは出来る。
スカートのポケットから札を取り出す。
日頃から身につけていてよかった。
使う時が来ないことの方がよかったけど。
今更後悔しても遅いんだ。私が動かないと終わらない。
そうしないとずっと、二人はすれ違ったままになってしまう。それは避けないと。
「発(ハツ)…」
小さく唱える。
手のひらでそれは淡く輝き体内へと吸い込まれる。
ちゃんと発動出来てる。よし、私は出来る。私なら出来る。
「秋月くん!」
彼の名前を呼べば振り返ってくれた。
金色の瞳と目が合う。
私は彼に笑顔を向け言った。
「そこで待っててくださいね」