獣耳彼氏
繰り出せ一発
それだけ言うと一気に跳躍した。
秋月くんを越え向こうに居る秋夜さんの目の前に着地する。
「マコト!」
後ろで秋月くんが戻れと私を呼ぶ。
何しているんだと彼が問いかけてくるが、私はそれを無視する。
これをしないことには私の気が済まないから。
すぐそこで目を丸くし、驚いている秋夜さんに向かって。
手を大きく振り上げた。
そして、その手のひらを彼の頬目掛けて持てる力を全て込め打った。
パシンッ!と大きな音が周囲に響き渡る。
私に叩かれた衝撃で秋夜さんがフラつき膝をつく。
徐々に打たれた左頬が赤みを帯びていく。
「な、に…を」
「あのですね!」
勢いで叩いてしまった。
勢いで言葉を発していた。
話すことなんて何もまとまっていないのに。
でも、確実にこれだけはこれだけは言いたい。
一言彼に物申したい。
「あなたは馬鹿ですか!?馬鹿なんですか!?大馬鹿者ですよ!」
一息に言い放ち叫んだ。