獣耳彼氏
それだけじゃ足りなくなるのも当たり前で。
「なんなんですか!?好きだから嫌いって。まず、それが矛盾してるんですよ!
あなたの過去が辛いものだったのは聞いたから分かりますけど。
けど。だからって、その矛先がなんで秋月くんに向かうんですか!?
恨むべき人はもっと他に居るでしょう!?
恨むべき人はあなたを追いやった里の人であって、秋月くんではないはずです」
ああ。私は一体何を言っているのだろう。
言ってることがまとまってなくて破茶滅茶だ。
でも、ここまで来たらもう勢いで言うしかない。
中途半端で止めるわけにもいかない。
全て言い切ってしまおう。私の思うことを。
「あなたは秋月くんのこと唯一無二の兄弟だって言いましたよね?
だったら、大切にして下さいよ。
あなたは、あなたは…寂しかったんですよね?ずっと一人で。
一緒に居た秋月くんと離されて。
悲しかったんですよね?
寂しかったんですよね?
一人ぼっちにされて。
だったら、だったら。大切にしましょう?
だからこそ、大切にしましょう?
恨んでいたって何も良いことなんてないですよ。
だから…」
「マコト。もういい」
トンっと軽く肩に手が置かれ振り返るとそこには、顔を顰めた秋月くんが立っていた。
秋、月…くん。
吐き出された呟きは声にはならず、空気だけはそこから漏れた。