獣耳彼氏
「ああ!もう!何なんですか!?」
新月の夜に男の人二人が目の前を行ったり来たり。
ふらふらと左右に揺れている。
何のためにしている行動かも分からない。
そんな意味も分からない行動を目の前にしたら叫びたくもなると思う。
「ほら。怒っちゃったよ」
「マコトはそこで黙って立ってればいいんだよ」
後ろも振り返らずに言った秋月くん。
…プチン。あーあ、切れた。切れちゃったよ。遂に堪忍袋の緒が。
秋月くんの何気なく発した言葉でさ。
切れちゃったよ。もう、知らないんだから。
さーてと。スタスタと歩みを進める。
目的は秋月くんの目の前。
そこに行かないとこれは出来ないから。
さあ、覚悟してよ。
「秋月くん…」
怪訝な表情で彼は私を見ている。
一度、拳を握り気合いを入れる。
そして、私は繰り出した。
秋夜さんに与えたもの以上に強烈な、渾身のビンタを。
秋月くんの頬へ。