獣耳彼氏
「ボクが君を見たり、名前を呼んだりするのが嫌なんだよ。秋月は。愛されてるね」
ニコリと笑顔を浮かべ言った秋夜さん。
彼が最後に続けた言葉が耳に残る。
愛されてる…愛されてるって、一体誰が誰を。
「秋月がマコトちゃんをだよ」
そんなの、そんな訳ない。
秋月くんが私を愛してるなんて。
絶対、そんなことあるわけないのに。
あるわけないのに…もし、本当に彼が私を愛してくれていたらとか。
ありもしない想像をしてしまう。
「愛してるんだよ」
彼は仕方なく私を守ってくれてて。
「守りたいと思ったから」
面倒な存在だと思っているのに。
「面倒なんかじゃない。心配だから」
愛してるなんて言われたら、期待しちゃうじゃんか。
「期待していいんだよ」
やめてよ。そんなこと言うのにやめてよ。
「秋月は素直じゃないからね。全て本当のことだよ」
私の思ってること全てに秋夜さんが答える。
「…くっそ…」
秋月くんが舌打ちしたと思ったら私の腕を振り払い一歩後ずさる。
真っ赤に染まった秋月くんの顔。耳までも真っ赤だ。
そんな彼の姿が見る見る内に元の人間の姿へ戻っていく。
頭に生えていた獣耳がなくなり、金色の瞳が薄茶色に戻る。