獣耳彼氏
自由の利く腕をお兄ちゃんへと当てようと何度も振るうが軽々と避けられ。
合わせて足でもどうにかお兄ちゃんにダメージを与えようとしている。
それもお兄ちゃんには当たってないけど。
お兄ちゃんはお兄ちゃんらしく体を使った拘束で彼の逃走を止めていた。
そんな彼らの元へと駆け寄る。
「秋月くん…」
「…マコト」
私を見上げる秋月くんの瞳が動揺で揺れている。
私に来て欲しくなかった。
そんな風に読み取れてしまう秋月くんの瞳の色。
逃げたということは、気まずくて逃げ出したということ。
秋夜さんの発した言葉が図星だったから?
ううん。それは彼本人に聞かないと分からないことだ。
だけど、聞いて正直に彼が答えてくれるのか。
私の心を伝える。そう決めたけど、彼の心も聞きたいもの。
伝えるにしても、聞くにしても二人じゃないと嫌だ。
「お兄ちゃん、そこどいて。あと、司さんから伝言。早く戻って来いって」
「え?あ、おう。…大丈夫か?」
心配そうに眉を顰めるお兄ちゃんに私は笑顔で頷く。
大丈夫だよと表情で表す。
それを受けて恐る恐るといった感じでゆっくりと秋月くんの上から離れるお兄ちゃん。