獣耳彼氏
「秋月くんが好きだから」
秋月くんの瞳を真っ直ぐ見て、一切逸らすことなく全てを言った。
逸らすことは出来なかった。
緊張で直ぐに俯いてしまいそうになる顔を無理やり上げて、秋月くんを見つめ続けた。
私の気持ちがちゃんと届くように。
私が告白した瞬間、暗闇の中、彼の瞳の瞳孔が驚きで大きくなったのが見えた。
何を言っているのだと彼の瞳が言っているようだ。
一度言ってしまえば、羞恥は少し薄れてくるもので。
彼が答えてくれるまで言ってしまおう。
どんな答えが返ってきてもいい。
私の気持ち、一世一代の一生に一度の告白として。彼に伝える。
「秋月くんが好きなんです。好き…好きだから離れたんです。仕方なくなんかで守られたくなくて。秋月くんに傷ついて欲しくなくて。だって、私だって守れる。守られるだけじゃない、秋月くんを守りたいんです。好き、だから…大好きだから…」
「やめろ!もう、それ以上何も言わないでくれ…」
「…っ!」
突如出された大きな声に言葉が詰まる。
私が独白のように吐き出した告白から目を逸らした秋月くん。
それが答えなんだ、彼の。
逸らされた瞳は横を向き、次に下を指し、とうとう顔を俯けた。
俯く秋月くんから放たれた声に一歩後ずさる。
明確な拒絶に秋月くんの姿が見ていられない。
私の気持ちとは別なんだ。彼が抱くものは。
下がる視線。一方的に告げた告白は到底受け入れられるものではなかったんだ。
まず、秋月くんが私のこと好きなはずがないもの。
そうだよね。分かりきったことだったのに。
浮かれていたんだ。