獣耳彼氏
彼の発した言葉を聞いて、思わず空を見上げる。
秋の空に浮かぶ月。
これだけ明るいんだ。夜空には満月が浮かんでいた。
丸く大きな月が。太陽の光を受け、輝いていた。
まるで、秋月くんの髪の毛のように。
「俺の名前」
彼は言った。
抑揚はあまりついていないけど、暖かみのある彼の言葉。
静かに淡々と告げられる言葉たち、全てが暖かい。
「アキヅキ…秋の月、ですか?」
私が聞くと、肯定するように彼は頷いた。
秋月…秋の月。
秋月さん。秋月くん。秋さん。秋くん。
…うん。決めた。
「素敵な名前ですね。秋月くん」
金髪の儚い感じの彼にぴったりの名前。
綺麗な名前だから、きちんとその名前全てで彼を呼びたい。
そう思って笑顔と共に彼に問いかけた。
秋月くんは特にくん呼びを嫌がる様子もなく、柔らかい笑みを浮かべてくれた。
初めて見るその笑顔に、何故か私も嬉しくなる。
不思議な人だ。秋月くんって。
なんだろう。彼と一緒に居るだけで、心が穏やかになる。
部長のことも忘れられる。
余分なことは考えられなくなる。