獣耳彼氏
獣耳彼氏
「今日、真琴なんかおかしくない~?」
「え?」
お昼休み、自分の席でお弁当を食べている所で京子が切り出した。
広げたお弁当の中はお昼休みが始まって20分が経っているのに一向に減っていない。
手に持つ箸も余り進まない。
「なんか、ずっと上の空って感じ~何かあった?」
何かあった。そう問われれば、昨日沢山のことがあった。
言い表すのが大変なくらい沢山のことが。
でもその中で一番心を占めているのは、当たり前だけど秋月くんのことで。
それを、京子に言うのはどうなのだろう。
離れたはずの秋月くんと再会することになった理由が部長で。
部長に襲われかけたとか言えないし。でも、相談出来たら。
秋月くんとキスしたと、告白したと言えたら。どうしたら良いと相談出来たら。
と、思うけど…やっぱり言えない!
キスしたなんて、到底言えない!
「な、何もないよ」
「そう~?ご飯も食べてないし、やっぱ何かあったでしょ~」
「何もないってば!本当に!」
思わず大きな声になってしまい、慌てて口を押さえる。
「ごめん…」
「ううん。まあ、言えないこともあるだろうし、言えるようになったら言ってよ。いつでも聞くからさ」
「うん。ありがとう、京子」
私が言うと笑って頷いてくれた京子。