獣耳彼氏
一緒に帰っている時に手を繋いだのは昨日が初めてなのに。
まるで、いつもしていることだからといった感じで秋月くんは手を繋いだ。
恥ずかしがる様子も一切なく。
「さっき…」
「ん?」
「さっき、彼氏を否定しなかったですけど…」
夜の道を二人で歩く中、気になったことを口に出した。
チラリと秋月くんを見れば彼も私の方を見ていて、ふと立ち止まった。
「否定して欲しかったのか?」
「それ、は…」
否定して欲しいか欲しくないかでいったら、もちろん後者になるけど。
それだと、私と秋月くんが付き合ってることになるって分かってるのかな。
どう答えたら正しいのか全然分からないけど、正直に答えればいいよね。私の気持ちを。
「否定して欲しくない、です」
「じゃあ、それが答えだろ」
「え?それって…」
そんなこと言ったら良い方に捉えちゃうけどいいの?
彼氏を否定しないってことは、秋月くんは私の彼氏になるよ。本当にいいの?
俯き思わず繋がれた手をギュッと握ってしまう。
すると、彼も私に答えるように握り返してくれて、俯いていた顔を上げる。