獣耳彼氏
「まあ、イケメンって言っても~真琴にはイケメンな彼氏様が居ることですし、どっちでもいっか~そうだよね~」
こうやって、時々秋月くんのことを匂わす発言をしてからかってくるのには呆れるけど。
相手をしても仕方がない。
とりあえず無視してお弁当を食べ進める。
「あ~あ。何かの拍子でこっちまで来たりしないかな~」
頬杖をつき、廊下の方を気にする京子に小さくため息をつく。
全く、ミーハーなんだから。
空を見ると薄く月が見えることに気付いた。しかも、満月だ。
晴れてる昼間に月を見つけた時はなんか得した気分になる。
秋月くんのような夜に浮かぶ秋の月も好きだけど、冬の昼の月も好きかもしれない。
「マコトちゃん!やっと、見つけたー!」
その時、私を呼ぶ声が聞こえた。
次に京子の慌てる声も。
「ちょっ!真琴、あの人だよ!イケメン転校生!なんで、真琴を探してるの~?!」
「一体、誰よ…」
空から視線を教室の入り口へと向ける。
女子の人集りの出来てる入り口付近。
そこから、一つ頭が抜けて見えるその姿は。
「秋夜さん…?え、なんで!?」
ガタリとその場に立ち上がる。
そう、そこに立っていたのは秋月くんの双子の兄である秋夜さんだったのだ。
京子が噂していたイケメン転校生の正体。
「シュウヤさんってあのイケメン転校生のこと?!」
「…秋月くんの双子のお兄さん。ちょっと行ってくる!」
小声で京子に簡単に説明すると、秋夜さんの元へと駆け寄りそこから連れ出した。
人の居ない所、道場へと。