獣耳彼氏
鏡を見なくても分かる。私の顔は今、真っ赤になっているだろうと。
「あ〜赤くなってる〜」
「〜もうっ!」
一々、言わなくていいの!自分で分かってるから。
京子なんかに聞くんじゃなかった。
秋月くんに彼氏のフリをしてもらうなんて、無理に決まってる。
お願いしたところで、秋月くんが了承してくれることはないだろうし。
まず、頼むこと自体、恥ずかしくて言えないし耐えられないわ。
あの茶色の瞳で見られただけで、赤くなってドキドキするっていうのに。
秋月くんに会ってからというものの、私なんか変だ。
すぐに赤くなって、緊張して。
今までの私からは考えられないぐらい、男の人に翻弄されてる。
確かに秋月くんは顔も整ってて、冷たそうに見えて実際は優しくてかっこいいけど。
実質、しゃべったことがあるのは二回だけだよ。
それなのに、こんなのって。
私…秋月くんが好き、みたいじゃん。
あーもう!わけが分からない。
考えても考えても、頭の中は整理されない。
逆にどんどんこんがらがってくる。
私はどうしたらいいの?
私はどうしたいの?
このめちゃくちゃな頭の中を整理することが出来ず、部活にも身が入らなかった。
挙句には、部長にまで心配される始末。
思わず投げてしまったのは、致し方あるまい。