獣耳彼氏
一つ頼んでもいいですか
次の日の朝。
セットしていた携帯のアラームがけたたましく鳴り響いた。
嫌でも耳に入ってくるアラームの音に顔を顰める。
カーテンの隙間からは朝日が覗く。
目を開こうにも強い睡魔が襲ってきてなかなか開くことが出来ない。
それでも、起きないわけにはいかない。
平日なのだから、当たり前に学校がある。
体調が悪いわけではないから、休むことも出来ない。
寝ぼけ眼を擦りながら、のそのそとベッドから起き上がる。
なんで、今日はこんなにも眠いのか。
それは、昨日の帰り際の出来事が関係している。
あの影と風。
その二つが寝る前まで気になって仕方がなかった。
「一体、なんだったんだろう…」
全ての準備を終えて、リビングで朝食を摂る私。
考えても考えても答えが出るわけがなく。
ボーッとヨーグルトを食べながら思う。
一つ目の影は生ぬるい風を連れて駆け抜けて行った。
鳥肌が立つほどの気持ち悪さを伴う風。
それは、日頃感じている風とは確実に違う。
普通ではないように感じた。
二つ目の影は暖かい風を連れて、一つ目の影を追いかけて行った。
その風は、私が最近感じたことのあるような暖かさを纏っていた。