獣耳彼氏
それらの正体が気になって、昨晩はなかなか寝付くことが出来なかった。
それが、この睡魔の原因でもある。
「おはよー」
その時、ガチャりと扉を開け、お兄ちゃんがリビングへと入って来た。
髪の毛をみっともなく爆発させて、目を瞬かせる。
「おはよう、凌(シノグ)」
「おはよーお兄ちゃん」
凌とはお兄ちゃんのこと。
お兄ちゃんはふらふらと足元は覚束無いものの、無事に私の隣にある椅子へと座る。
くあっと眠たそうに大口を開けてあくびをするお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんの顔を見てみれば、どこか今までのお兄ちゃんとは違う印象を受けた。
なんか、前と比べると男らしくなった。
そんな風にふと見えた。
「お兄ちゃん。なんか、変わった?」
「ふぁ?」
食パンをくわえながら私を振り返るお兄ちゃん。
まるで、ハムスターのごとく頬張りもぐもぐと口を動かす。
えっと、うん。やっぱり、さっきのは気の所為だったみたい。
何も変わってない。お兄ちゃんはお兄ちゃん。
情けない顔を持つ、不幸そうなお兄ちゃんのままだ。
余計な心配をして損した。