獣耳彼氏
なんで、どうして、と疑問しか湧いてこない。
こんな朝早くから、どうして彼はここに居るの?
「え、あの…秋月くん?どうしたですか、こんな時間にこんなところで」
秋月くんの家がどこにあるのかは知らないけど。
私の知らないところで、彼がここに居る理由があるのかもしれない。
その理由は私には分からないけど。
「マコトに用があって待っていた」
「えっ?」
ドキリとする言葉。
秋月くんはそう言うと、私の腕を掴んだ。
彼の大きな手が私の腕を優しく包む。
金髪男に掴まれたときとは違って、嫌悪感なんて一切感じない。
逆に、彼に掴まれているところから熱が溜まっていく。
「え、あの…用って…」
彼の顔が段々と近づいてくる。
茶色の瞳が私の目を見つめる。
一方、私は彼と目を合わせないように、瞳を泳がせるのに必死。
私が目を合わせないようにしているってのが分からないのか。
秋月くんは私の目を執拗に追いかける。
「あの…用って…」
彼の顔が凄く近い。
どうにか、彼の瞳から逃げようと話しかけても答えてくれない。