獣耳彼氏



なんで、どうして、と疑問しか湧いてこない。


こんな朝早くから、どうして彼はここに居るの?



「え、あの…秋月くん?どうしたですか、こんな時間にこんなところで」



秋月くんの家がどこにあるのかは知らないけど。


私の知らないところで、彼がここに居る理由があるのかもしれない。


その理由は私には分からないけど。



「マコトに用があって待っていた」


「えっ?」



ドキリとする言葉。


秋月くんはそう言うと、私の腕を掴んだ。


彼の大きな手が私の腕を優しく包む。


金髪男に掴まれたときとは違って、嫌悪感なんて一切感じない。


逆に、彼に掴まれているところから熱が溜まっていく。



「え、あの…用って…」



彼の顔が段々と近づいてくる。


茶色の瞳が私の目を見つめる。


一方、私は彼と目を合わせないように、瞳を泳がせるのに必死。


私が目を合わせないようにしているってのが分からないのか。


秋月くんは私の目を執拗に追いかける。



「あの…用って…」



彼の顔が凄く近い。


どうにか、彼の瞳から逃げようと話しかけても答えてくれない。



< 36 / 249 >

この作品をシェア

pagetop