獣耳彼氏
それならと、彼自身から離れようにも、腕を掴まれているからそれも出来なくて。
腕からの熱が体全体に巡って顔にまで溜まってくる。
おそらく、今の私はどこからどう見ても顔が赤いに違いない。
恥ずかしいことに。
「マコト」
「…っ!はいっ」
突然、秋月くんに名前を呼ばれ、思わず真正面を向いてしまった。
秋月くんのそれと目が合う。
逸らすことの出来ない真っ直ぐな瞳が私を見つめる。
必然とドキドキと胸が鳴る。
(何!?何なの!?)
秋月くんは何も発することなく、ただ私の目を見ている。
茶色の瞳が私を捉えて離さない。
何も考えられなくなる。
ふと、力を抜いたら膝から崩れて腰を抜かしてしまいそう。
秋月くんとの近い距離に口を一文字に引き結ぶ。
ギュッと目をつむりたいのにそれすらも出来ない。
次第にプルプルと体が震えてきて、次の瞬間には。
「…っ!っ、はぁ…」
肺に溜まった息を大きく吐き出した。
私の知らないところで、止まっていた息。
酸素が足りなくなって、何度も空気を吸い吐き出す。
そして、大きく息を吸い込む。