獣耳彼氏
秋月くんが不思議そうに目を見開く。
合わせて首を傾げる。
「何だ、息止めていたのか」
「だって…っ、秋月くんが…!」
「俺が何だって…?」
ようやく、開放された腕。
思わず、彼に掴まれていた腕に反対の手をあてがう。
ドクンドクンと血液が流れているのが伝わってくる。
私が息を止めるような原因を作ったのは秋月くんだっていうのに。
彼は何も分かっていない様子。
「もう、いいです…」
「……?」
呆れてように私が言うと、秋月くんは首を小さく傾げた。
秋月くんって…鈍感なんだと、今分かった。
段々と分かってくる秋月くんの人となり。
驚くようなこともあるけど、それが少し嬉しくも感じた。
「あ!それで、秋月くんの用ってなんだったんですか?」
ようやく、動機も落ち着いて本題に入った。
落ち着いたと言っても、やはり心拍数はいつもより多い。
ほんの少しのことで、また暴れだすだろう私の心臓。
「俺のはもう終わった」
「はぁ…?」
何、終わったって。
私に用があったって言っていたのに、私何もしてないよ。
どういうこと?