獣耳彼氏
一度、深呼吸をする。心を落ち着かせる。
「私に好意を寄せてくれてるみたいなんですけど、それがしつこくて。断っても何度も告白とかしてくるんです。だから、私に彼氏が出来たら諦めてくれるかなって。思いまして…」
「それで俺に…?」
「はい」
秋月くんは私の言葉を笑うこともなく。
一度考える素振りを見せると笑った。
思わず見とれてしまうような綺麗な笑みで笑った。
彼が笑顔を浮かべた瞬間、ドキリと胸が鳴る。
(やっぱり、綺麗…)
男の人にしては、綺麗な顔立ちをしている秋月くん。
日本人とはやはり異なる彼。
おそらく、どこか外国の人とのハーフなのだろうとは思うけど。
これだけ、端整な顔立ちと綺麗な金髪、吸い込まれるような茶色い瞳を持っているから。
「…いいぜ」
「え?」
「受けてやるよ、それ」
彼氏役。秋月くんが言った。
彼のその言葉に目を丸くする。
まさか、まさか!
まさか、受けてくれるなんて思ってもなかったから。
こんな、私のお願い。頼みを。
「本当にいいんですか…?」
「ああ」
「あ、ありがとうございます!」
私は腰から体を曲げ頭を下げた。90度の最敬礼。
感謝の気持ちを最大限に表すために。