獣耳彼氏



段々と私の方へとにじり寄ってくる京子に引き気味になる。


こうなることが分かっていたから京子に言うのは気が引けたんだよ。


それでも私一人じゃ秋月くんとどう接したらいいのか分からなかったのも事実。



「彼氏のフリをしてもらうことになったはいいけど、どうしたらいいの?」



私はこれでも、異性と付き合うということ自体初めてのことだから何をしたらいいのかなんて分からない。


京子の言葉からこういうことになったはいいけど。


秋月くんも私から何をするかを伝えない限り、何もしてくれないと思う。


彼氏が居た試しのない私だ。


付き合いたての彼氏と彼女がするような具体的なことなんて何も考えつかない。



「う〜ん。とりあえずは、一緒に帰るとかかな〜」


「部活終わるのを待ってもらうってこと?」


「うん」



いや、さすがにそれは申し訳ないよ。


今日の朝とか偶然会ったけど、実は家が遠いかもしれないし。


まず、秋月くんが昼間何をしているのか想像もつかない。



もしかしたら、私と同じ高校生かもしれないし、大学生かもしれない。


社会人という可能性もある。


そんな人に迎えに来てとか…


待っててとか…


聞けるわけがないよ。



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