獣耳彼氏
そして、運命の放課後。空手部、部活開始。
したはいいものの、案の定私は部活に身が入らない。
秋月くんのことが気になって。
部活が終わったら秋月くんが待っていると思うとドキドキしてくる。
「水嶋、なんか変じゃないか?どうした」
落ち着かず挙動不審な私に近づく一つの影。
私の恐怖心の対象であり天敵。
「部長…」
「なんでもないですよ〜ね、真琴!」
肩に手を置き、斜め後ろから顔を出す京子にほっとする。
部長と二人で話すということが最近耐えられなくなってきた。
本当に部長と関わることをこの体は拒否しだした。
部長には申し訳ないけど、生理的に無理。
別に部長の見た目が気持ち悪いというわけではない。
京子が言うにはかっこいい部類に入るらしい。
それでも、部長が告白やらをし始めてからは本当に無理になった。
最近では京子に感謝してもしきれないくらい。
不真面目な時もあるけど、大概は私を助けてくれたり、手立てを与えてくれるから。
それが、救いになっている。
「ありがと、京子」
「い〜え〜」
京子に引かれるように部長から離れた。
「…っ!」
その時、背筋が凍るような視線を感じた。
鳥肌がたつんじゃない。冷たくて凍てつくような視線。
恐る恐る、その視線を感じた方を振り向くけど、そこには空手に励む部員の姿しかない。