獣耳彼氏
あー、もう。こんなことになって。
それもこれも、全て居なくなった京子のせい。
後で京子には何か奢ってもらうことにしよう。
それぐらいしてもらわないないと、私の気が済まないんだもん。
「…ッチ。聞いてんのかよ!」
さらに強い力に引っ張られ、体がふらつく。
その反動で肩にかけていたカバンが滑り落ちる。
それが、合図ともなった。
「あー…もう。うるさいな。行かない。…って、言ってるでしょ!」
そして。私は食らわしてやった。
私の腕を掴んでいるその金髪頭に。
…背負い投げを。
掴まれていた腕を軸にして、私よりも遥かに背の高い大の大人を投げた。
盛大な音がショッピングモールの空間に響き渡る。
ポカンと間抜け面を晒す観衆。
何が起きたのか分かっていない様子の地面に背をつける金髪頭。
目を丸くするその人の連れ。
「女の子には優しくしないと…痛い目みるんだから」
私は彼らに冷たく言い放つと、その場から離れるために振り返った。
ざわざわと周りがざわつく。無駄に目立ってしまった。
こんな大騒ぎになって、大きな音だったから警備員さんもすぐに駆けつけてくるだろうし、早く行かないと。
周りを囲む観衆を縫うように歩き、京子を探した。