獣耳彼氏
「あの、いいんですか?忙しかったりしないんですか?」
「別に、平気」
秋月くんはそう言うけれど、やっぱり気になる。
学校とか仕事とか大丈夫なのかなと。
まず、秋月くんっていくつなの?
それすらも私は知らない。知っていることと言ったら秋月という名前だけ。
それ以外は何も知らないんだ、私は。
秋月くんは何歳なのか。
秋月くんは何が好きなのか、嫌いなのか。
秋月くんの誕生日は。
秋月くんの趣味は。
…何も、私は知らない。そのことが少し悲しく感じた。
でも、知らないことはこれから知ることが出来る。
知る努力をすれば、知らないことなんてなくなる。
まずは、一番大事で重要な一番知りたいこと。
「あの、一つ聞いていいですか?秋月くんって、何歳…ですか?」
失礼なのも今更なのも重々承知で私は聞いた。
私の予想では20歳前後、18から22の間くらい。
私の言葉に秋月くんは一度私を見て、前を向き直った。
私を見たときの顔は嫌悪感とかは見られなかったから安心した。
嫌な奴だと思われるのだけは嫌だから。
秋月くんの答えを今か今かと待っている私がいる。
内心緊張している。彼が何歳なのか。
「…17」
…え?なんか、凄い耳を疑いたい言葉が聞こえてきたんだけど。…え?
「え!?17!?え?ということは、高2ですか…?」
秋月くんを見ると前を見据えたまま、こくりと頷く。
それが肯定の意だというのは直ぐに分かった。