獣耳彼氏



ーー家に着くと一本の着信音が響いた。


手の中で震える携帯。


それを手に取り画面を確認すると、京子からだった。


鳴り続ける携帯を眺める。


しばらく眺めてみるけど、一向に止まる気配はない。



なんで、彼女が電話をかけてきたのか、すぐに分かった。


秋月くんのことだ。


絶対、秋月くんのことを聞くために電話してきたんだ。


携帯を眺めていることから分かると思うけど、出るのはあまり気が進まない。


出たら出たでうるさそうだから。


出なかった場合でも学校で聞かれると思ったら、それもそれで面倒くさそうだし。


しょうがない。私は携帯の通話をタップした。



「もしもし…」


「もしもし、やっと出たね〜真琴〜」



呑気な京子の声が携帯越しに耳に届く。


顔が見えなくても声だけで分かる。


京子が今、ニヤけているだろうことは。



「部長どうだった?」


「ショックで固まってた〜すごい、効果あると思うよ〜」


「そっか。なら、よかった」


京子の言葉を聞いて一息ほっと吐く。


これで、部長も諦めをつけてくれるかもしれない。


まだ、本当に効果があったかは分からないけど。


明日、一日部長が告白とか絡んでこなかったらそれは効果ありってことかな。


秋月くんに頼んでよかった。


結果が見えるまでは不安は完璧に拭うことはできないけど。



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