獣耳彼氏



それから、数週間が過ぎあくる日の日曜日。


京子に誘われ例の金髪男背負い投げ事件の起きたショッピングモールへと来ていた。


待ち合わせの場所となっているお店の前で京子を待つ。


誘ってきた本人が約束の時間に遅れるってどうかと思う。


時計を見ると13時10分。


待ち合わせ13時なので、既に10分遅れていることになる。


すれ違う人の中に京子の姿は見えない。



「もう…」



連絡しても一向に出る気配がないし。


さて、どうしたものか…


こうなったら、今度こそ迷子のお知らせをしてもらうのもいいかもしれない。


前回はあの事件のせいでそれは出来なかったから。


思い立ったが吉日。すぐに行動に移そうとしたその時。



「真琴〜」



待ち人である京子がやって来た。


急ぐ様子は全くなくのんびり歩きながら手を振っている。


私は一つため息を吐いて京子の方へと歩き出した。



「京子、遅い」


「ごめん、ごめん〜かわいいの見つけちゃって。ってことで、はい。これあげる〜」



手に持っていた小さな袋を差し出してきた。


ニコニコと笑みを浮かべている京子に、反射的にそれを受け取る。


カサリと音を立てて私の手の中へと収まる袋。



「なに、これ」



急に渡されてどうしたらいいのか分からない。


手のひらの上にある袋をジッと見つめる。


小さくお店のロゴが入っている紙袋。



「いいから、開けてみて〜」



首を傾げつつも、言われるがままに袋のテープを剥がす。


重くはないこれの中身は一体なんだろうか。


あまり期待はせずに中身を取り出す。


シャラっと手のひらに落ちるものが一つ。



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