獣耳彼氏
やっぱりか…嫌な予感はしてたんだ。
なんとなくこうなるような気はしてた。
わざわざ、休みの日に京子から誘ってくるぐらいだから。
初めて秋月くんと帰ったのが水曜日。
そして昨日、一昨日と京子に秋月くんについてたくさん聞かれたけど全て誤魔化してきたから。
何も言ってくれない私に痺れを切らしたのだろう。
今思えば尋問しようと、そういう魂胆が見え見えだった。
私としたことが。そんなことにも気づかないなんて。
…浮かれている。
フードコートではなくレストラン街の一角にあるカフェへと連れて来られた私。
京子と向かい合わせに座り、注文を取りにきた店員さんに私はカプチーノ、京子はミルクティーをそれぞれ頼んだ。
頼んだものが来るまでは終始無言。
机の上に置いたブレスレットが照明の光を受けてキラリと光る。
実を言うと、このブレスレットはすごく私好み。
小さな月と星のチャームが交互についてて、月は満ち欠けを表現している芸の細かさ。
満月を表しているだろうシルバーのストーンがいい味を出している。
「お待たせしましたー」
店員さんが私たちにそれぞれカップを置く。
ごゆっくりどうぞ、それだけを言うとそのテーブルに私と京子の二人だけになる。
周りの喋る声がやけに耳につく。
京子が一口ミルクティーを口に含んだ。
合わせて私も喉を潤すためにカプチーノに口をつける。
「アキヅキくんについて、詳しく。教えてね。真琴?」
いつもとは違うしっかりとした口調で京子が言う。
こうなってしまったら止められない。
真面目になった証拠だ。