獣耳彼氏
「あ、ねえ。一つ京子に確認。部長はもう大丈夫だと思う?」
それは一番の不安どころ。部長。
この二日間の内に部長がアプローチしてくるようなことは一度もなかった。
こちらを見ていることあっても、私がそれに気づくとすぐに顔を背けた。
自分でも効果はあったと思ってる。
それでも、第三者の目から見ての効果がしりたかった。
「うん。効いてるよ、彼氏作戦。効果覿面」
第三者の言葉を聞くことでようやく実感は湧いてくるもので。
ホッと一息をつくことが出来た。
一つ肩の荷が下りたような感覚。
少し温くなってしまったカフェラテを一口飲んだ。
コーヒーとミルクの香りが鼻をくすぐる。
「すごい、ショックを受けてたけどね〜」
京子は笑いながらそう言うけれど、その言葉を聞いて少し心苦しくなった。
こんな見せつけるかのように彼氏の存在をチラつかせる。
ずっと想いを告げられてきたからこそ心が痛い。
逆の立場だったら、私は耐えられないかもしれない。
心苦しい、心が痛いなんて想いに答えなかった私が言えることじゃないのは分かってる。
だけど、思わずにはいられない。
ごめんなさい。それだけが、頭の中にある。
「まあこれで一応は落ち着けるんじゃない?」
「そうだね」
「でも!」
京子がずいっと机を乗り越え顔を近づけてくる。
思わず避けるために体を後ろに反らした。