獣耳彼氏
ナンパしてきたチャラ男も金髪だったけど、同じ金髪でも桁が違う綺麗な金色。
天然な色っていう感じ。
金髪頭のは、地毛だろう黒色が混じっていて汚いし何より傷みが酷かった。
だけど、遠目から見ても分かる。
そこに立つ彼のは傷みなど知らない金髪だ。何故か、目が離せない彼の姿。
「真琴〜?どうしたの〜?」
「あ、ごめん。今、行く」
少し離れた所まで歩いていた京子が立ち止まり私を呼ぶ。
彼の視線が気になる所だがまた、はぐれたら元も子もない。
慌てて彼女の元へと駆け寄る。
しかし、やはり気になってもう一度振り返った。
だけど、振り返ったころには、もう綺麗な金髪の彼は居なかった。
もう一度あの色を見たかったが少し残念に思いつつも、京子の横に並ぶ。
そして、あることを思い出す。
「あ、京子。クレープね」
「え〜なんでよ〜」
そうだ、忘れちゃいけないことがあったわ。
こんなことになった、主たる原因は京子が居なくなったからよ。
サービスセンターに行くのは叶わなかったから、クレープで我慢しよう。
「京子が居なくならなければあんなことにはならなかったの!当然でしょ。ほら、行くよ」
「え〜」
最大の譲歩。嫌がる京子の腕をむりやりに引いてクレープ屋さんへと急いだ。
今日見た彼。
金色の髪と茶色の瞳を持った彼の姿がいつまでも脳裏に残っていたのは気の所為…ではない。