獣耳彼氏
茶色の瞳と視線が重なる。
何の違和感もなく。
そこにあるのが当たり前のように。
金色に見えたのは、見間違いだったかのもしれないと思えてくる。
「えっ!あ、ちょっと…っ」
腕は解放されることなく、再び秋月くんが歩き出した。
しかも、目指す先は道も何もなく草むらの中。
木々が生い茂り月明かりも届かない場所。
そんな所を秋月くんは迷いなく突き進んでいく。
どれくらい歩いていたのか。
それは突然訪れた。
木々に覆われていた頭上が開け、月明かりがこれでもかと降り注ぐ。
目の前に広がるのは、小高い丘となっている場所。
公園の裏手に広がる雑木林を越えた先にある静かな空間。
人口の光が何一つないそこを、秋月くんは歩いていく。
変わらず腕を引かれている私も自ずとついて行くことになる。
月明かりを受けて、太陽の光が当たる時とは違う輝き方を見せる秋月くんの金髪。
それが月光に変わると仄かに優しい輝きを表す。
どこからどこ見ても後ろ姿は普通の人。
だけど、あの時は?
あの時の秋月くんの姿は?
獣の耳が頭から生えた金目の秋月くんは?
丘を登り切ったところで足を止めた秋月くん。
次いで、腕が離される。