獣耳彼氏
人とはかけ離れた秋月くんの姿。
普通だったら驚くなり怖がるなりするのだろうけど、なぜか。
なぜか、そんなことはなくて。
逆に彼のその姿が本当だというかのごとく、しっくりくるというか。
彼の姿に見入っていたというのが本音だ。
秋月くんの本当の姿がそこにあるのだと。
「わ、たしは…」
彼が私をじっと見ている。
違うと言ったら私はどうする。
その答えを彼は待っているのだろう。
それに答えなくてはならない。
秋月くんの望む答えがなんなのか私には分からないけど。
嘘偽りのない、私の本音を彼に伝えるべきだ。
「私は……って、思います」
「何?」
上手く聞き取れなかったのか、訝しげな表情を浮かべる。
真っ直ぐと金色の瞳が私を見ている。
逃げる隙さえ与えないその視線。
逃げるなんてこと、一切考えてないけど。
そんな風に思えてしまうほど私を捉えてくる。
その視線をきちんと受け止め、もう一度言う。
「秋月くんは秋月くんだと思います。例え、人ではなくても…」
「…そうか」
柔らかく微笑む秋月くんに胸が高鳴った。
ドキドキと胸が早鐘を打つ。