獣耳彼氏
夢だったらどれだけいいことか
目が覚めたらそこには見慣れた天井が広がっていた。
クリーム色のシンプルな壁紙は暗くてよく見えないがここは自分の部屋だろう。
匂いやらその空気やらで分かる。
布団をかぶってベットに横たわる自分。
どうしてここに居るのかしばらくの間分からなかった。
ただボーと天井を見つめる。
寝起きで回らない頭。
ふとんに包まれていることの暖かさだけが皮膚から伝わって実感できた。
(私…どうして…)
いつふとんに入って、いつお風呂に入って、いつ夜ご飯を食べて、いつ帰ってきたのか。
どの記憶も見当たらない。
カーテンの隙間から覗く空はまだ薄暗い。
まだ夜が明けきっていないことは一目瞭然だ。
一番新しい記憶を探ろうと頭を働かせるがすぐに見つけることは出来ない。
とりあえず、今の状況だけでも把握しようとベットから身を起こした。
部屋の電気をつけ、いつもと違うところがないか探した。
そして、それはすぐに見つかった。
部屋の扉付近の床に置いてあるショッピングバック。
その横には私のカバン。
机の上にはペットボトルの水とコップが伏せて置いてある