獣耳彼氏



そして、私の今の格好。


いつも着ているパジャマではなくて、日曜日出かけた姿のまま。


それらを見たところでようやく記憶が蘇る。



「そうだ…私」



ボッと身体中の熱が一気に顔へと登る。


合わせてドキドキと心拍数が早くなった。


思い、出してしまった。


私が言ったことを。


秋月くんに言ったことを。



「私、好き…って言った…好きって…」



それも、彼の手を握り締めながら。


口に出してしまったことで、余計に心拍数が上がる。


バクバクと忙しなく血液を巡らせる心臓。


どうして、私あんなこと言ってしまったの。



どうして。


自分が言ったことなのに分からない。



秋月くんがなぜだか寂しそうに見えたから。


思わず手を握った。


そうしたら、寂しさを紛らわせることができるんじゃないかと思って。


一人ではないと伝えたかった。


人間でなくても、妖怪でなくても、半人前であっても。


秋月くんという存在を認めてあげたかった。


彼自身が否定しているように見えた存在を。


それだけだったのに。



なんで、私は好きなんて言ったの!?


しかも、言った瞬間気絶するとか…っ!


あれから一度も目覚めずにここに居るということは、もしかしなくても。


もしかしなくてもだ。


秋月くんが私を家まで運んでくれたってことだよね?


救急車という選択肢もあるけど、その場合だったら自分の部屋ではなくて、病院のはずだから。



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