獣耳彼氏
ということは、考えられるのは一つ。
秋月くんが運んだ。それだけだ。
あの分かりにくい丘に私たちの他に来る人が居るなんて思えないし。
秋月くんが倒れた私を一人放ったらかして帰るとも思えないし。
「っ…ああ!」
一人悶える私。
彼が私の言ったことをどう捉えたのかは分からないけど、気まずいことこの上ない。
それに、仮定として私を彼が運んだということは持ち上げたってことでしょう…?
羞恥心しかない。
これが全て夢の中での出来事だったらどれだけいいことか。
秋月くんが人ではなかったことに関してはこの際どうでもいい。
むしろ、それで納得してる。
秋月くんが半分妖怪だということに。
不思議に思うはずだ。
彼は人ではなかったのだから。
それよりも今重要なのは私の好き発言だ。
私の言った言葉は秋月くんにとってはどうでもないことなのかもしれない。
(そうだったらそうで寂しいけれど…)
それでも私にとってはとても大きなことで彼にどんな顔してこれから会えばいいのかさっぱり分からない。
また、会えるのかも分からない。
もしかしたら、秋月くんに避けられるということもあるかもしれない。
彼の秘密を知ってしまったことだし。
考えても何も進展しない思考は堂々巡り。