獣耳彼氏
「おはよう、お父さん」
お父さんがそこに居た。
新聞片手にコーヒーを飲む姿が様になっている。
娘の私が言うのもおかしいけど、お父さんはすごくかっこいい。
近くの大学病院の外科の先生であるお父さん。
お父さんが担当医だったら喜んで病院に行っちゃうくらい。
「真琴、体調は大丈夫なの?」
お母さんが私ように煎れてくれたカフェオレを机に置きながら聞いてきた。
額にヒヤリとした手を当てられる。
水をよく使うからかお母さんはいつも手が冷たい。
「大丈夫だよー」
その冷たさに思わず顔を顰めてしまう。
「体調って、何かあったのか」
「昨日、急に気を失ったみたいで運ばれてきたのよ。ビックリしたわ」
お母さんはそう言うと私の頭を一撫でして、お父さんの隣に座った。
逆に、お母さんが座ったのと同時にお父さんは立ち上がると、私の元へとやって来た。
「真琴。こっち向け」
素直にお父さんの方を向く。
椅子に座っている私と顔を合わせるように膝立ちになるお父さん。
おもむろに私の手首を取り脈を測ったり、目の色を確認される。
真剣な表情に口を挟むことが出来ない。
別になんともないのに。
「特に異常はないな」
「だと思って、連絡しなかったのよ」
軽い診察らしきものを終えて戻るお父さんに陰でホッと息を吐く。