獣耳彼氏
カフェオレを飲もうとカップに手をやる。
温かいぬくもりがじんわりと手のひらに伝わり心地がいい。
「それより、真琴を運んできた男の子は誰?」
「ぶっ!」
「な!?」
机に肘を付けながらお母さんが突然言ってきた。
その顔はとても面白そう。
ってか、楽しんでる。絶対。
思わず口に含んでいたカフェオレを吹き出しそうになる、慌てて口元をティッシュで拭った。
お父さんはお父さんで再び読むためか手に取ろうとしていた新聞を床に落とした。
「男…男、だと…」
うわ言のようにそう呟き続けるお父さんの姿が不気味。
私はといえば、とぼけるので精一杯。
「な、何のこと…?」
バレバレの誤魔化しは当然効果はない。
肯定しているようなもの。
役者でもない私にはこれが限界なのは当たり前。
「かっこよかったわよ〜ハーフなのかしら。彼氏でしょ?」
「か、彼氏!?」
そうなのか、真琴!?と、身を乗り出すお父さんに少し恐怖を覚える。
ダンディな顔が怒りなのか、驚きなのか、なんとも表現のし難い表情になっているから。
ぱしっと小気味いい音が聞こえてきた。
それは、お母さんがお父さんの背中を叩いた音で、呆れた表情を浮かべている。