獣耳彼氏
「私…秋月くんに好きです。って、言っちゃった…」
「…え!?嘘!なんで?どうして!?」
更衣室の床に腰を下ろした私に京子が詰め寄る。
驚きで目を丸くさせながら。
それに怯んで、後ずさりそうになるがそれをなんとか耐えた。
「勢いで思わず言ってた…」
「そ、それで。アキヅキくんの反応は…?」
京子が私以上に緊張した面持ちで聞いてくる。
しかし、それに答えられる私ではない。
なんせ、私も分からないのだから。
言ったという事実だけは覚えているけれど、その後は気を失って分かる訳がない。
「…分かんない。気を失っちゃったから、何も覚えてない」
「なにそれー!?メールとか連絡もないの?」
「うん」
コクリと頷く。
連絡がないってことは、秋月くんにとっては何でもないことなのかもしれない。
私が好きって言ったことなんて。
それでも、私にとってはすごく重要なことで、それに一喜一憂している。
苦しくなるほどに。
「今日、来るかも分かんない…」
「そうなんだ…」
「もう、全部に夢だったらいいのに…」
そうしたら、これ以上こんな思いはしなくて済む。
私の言葉に京子は苦笑するだけで何も言ってはくれなかった。