獣耳彼氏
人の心はその人にしか分からない
このまま何もなかったことになんて、私は出来る気がしない。
好きって言ってしまったのは覆すことの出来ない現実だって、ちゃんと分かっているし理解もしている。
だけど、夢だったらって思ってしまうのは仕方がないことでしょう。
彼が私のことをどう思っているのか全然分からないのだから。
現実から逃れるためにも、全てなかったことにしたい。
勢いで言ってしまった告白を。
そう思ってしまうのは至極自然なことだと思う。
私からメールを送ることも、彼からメールが来ることも一切なく。
無常にも時間だけが過ぎていき、遂にはやって来てしまった放課後。
空手部部活の活動時間へとなってしまった。
部活が終わった後はいつもだったら、秋月くんが校門で待っていてくれる。
だけど、今日は。
今日は連絡も取っていないから、秋月くん迎えに来ないかもしれない。
来ないと思う。
そう思っていても、やはり少し期待してしまうもので。
もしかしたら、秋月くんは来てくれる。
そう思ってしまうのだ。
好きだからこそ、私のいい方に考えてしまう。
何をしていても落ち着かない。
授業中も、休み時間も、そして今も。