獣耳彼氏
秋月くんと出会ってからというものの、空手着を着たら引き締まる心も、引き締まってはくれない。
常に緩みっぱなし。
段々、自分が弱くなってきている感覚さえする。
京子にもからかわれてばかりだし。
私は本気で悩んでいるというのに。
友だち、親友ならもっと協力してくれてもと、思ったりするが、これは私の問題だし。
最後はやっぱり自分で答えを出さなければいかなくなる。
部長という問題が薄くなってきているはずなのに、今度は秋月くんが私を翻弄する。
「真琴」
道場の片隅で他の部員が練習、組手を行っている様子を眺めていた私に、京子が近づいてきた。
彼女はさっきまで、一年生の男子部員とわいわい喋りながら練習していたはず。
いつの間にこちらに来ていたのやら。
そんなことにも気づかないほどに、私はボーとしていたのか。
「ねえ、聞いてる〜?」
膨れた顔で私を見る京子。
腰に手を怒っている様子。
「何?聞いてなかった」
「もう!ボーッとし過ぎ!今、色々考えても仕方ないでしょ!シャキッとして、ほら!」
パシっと背中を叩かれる。
しょんぼりしている私に喝を入れる京子。
叩かれた背中が地味に痛いけれど、彼女の姿がやけにたくましく見えた。
いつもはマイペースなのに。