獣耳彼氏
そして…部活が終わり、更衣室。
久しぶりに部活に精を出したことで、とても疲れている。
だけど、それがいい。
今の私にはこの疲れが妙に心地いい。
空手着から制服へと着替えた時、はたと気づいた。
そうだ。秋月くん…
いつもより、早いスピードで心臓が血液を送り出すものだから、体が火照ってきた。
空手をした後だからじゃない。
体は正直なもので、秋月くんが居るか居ないかなど関係なしに心拍数が多くなる。
そんな体を落ち着かせるために一度目を瞑り、大きく息を吐き出す。
幾分かさっきよりは落ち着いた気がする。
気休め程度には変わったはずだ。
「行こう、京子」
「はーい」
カバンを手に取り、外へと向かった。
秋の空は夏の空と比べると近く、日が落ちるのも早い。
既に暗くなり始めている空には当たり前だけど月が浮かんでいる。
秋の月。仄かに輝く月。
ドキドキしながら、校門へと向かっている。
いつもドキドキしていたけど、始めて秋月くんが待っていてくれていた時くらいに今のドキドキは強い。
京子と二人、並んで歩いているはずが、話すこともしていないからここに居るのは一人のようにも感じる。