獣耳彼氏
秋月くんの瞳と目が合う。
金色の瞳と…
「秋月くん…あの、降ろしてもらっても、いいですか…?」
「ああ」
ゆっくりと丁寧に地面に降ろされる。
地に足がついたことで、余裕が出てあたりを見渡せば、一度来たことのある場所。
どうやら、ここは丘のようだ。
さっきまでは走っていたことで、耳元の風鳴りが酷かったが、ここはとても静か。
だからなのか、降ろされた今遅れて心拍数が上がってきた。
ドキドキと鳴り出す心臓に、落ち着かせるためにも大きく息を吸い吐き出すを何度も繰り返す。
「な、何があったんですか…?それに、その姿も…」
金色の瞳と目が合ったということは、それは彼の姿が変わっていることを表す。
「…追われていた」
「え…?」
淡々とした口調で言う秋月くんに驚きが隠せない。
追われていた、って一体何に?誰に?
も、もしかして、部長…では、ないよね?
つい最近まで私が怯えていた存在。
部長だった場合の恐怖が蘇る。
「あの…追われていたって、誰に、ですか…?」
秋月くんに聞くが彼は目を伏せ、首を振るだけで分からないことを示した。